数理パズル『10 個の点』の解答が分からない。

こんにちは、たまごはん です。

ひらめきパズルの部屋 にある『10 個の点』という面白い問題を見つけました。

あなたは同じ大きさの円形のコインをたくさん持っています。
このとき、平面からどのように10個の点を選んだとしてもそれら全てをカバーするようにコインが置けることを示してください。
但し、コインを立てて置いたり、コイン同士を重ねてはいけません。

これの解答には、幾何学的アプローチではなく 確率 を用いたエレガントな証明が載っています。まさか確率を使うとは問題を見ただけでは想像もつかないアイデアですが、この証明について個人的に理解できないところがあります。

理解できないところについて

解答 の後半で、出題者の稲葉氏は以下のように述べています。

一方で、もし仮に、どうやってもこのシートで全てを覆うことができないような10個の点の配置が存在したならば、それら各点がコインによって覆われる確率は90%以下でなければなりません。このことは上で示した事実に反します。

10 個の点をコインで同時に覆えないような点の配置が存在した場合、各点のコインで覆われる確率(以下、被覆確率 と書きます)が 90% 以下になるようですが、そうであったとしても解答前半の「各点の被覆確率が 90.69%」という結果には矛盾しないのでは?と思っています。


というのも、前半と後半の被覆確率は条件が違うように思えるからです。

前半のほうは純粋に 1 個の点だけを見て、その点がコインで覆われるか否か(以下、被覆状態 と書きます)を議論しています。

一方、後半のほうでは、1 個の点だけでなく他の 9 個の被覆状態も考慮しているはずです。つまり、10 個の点を見たうえでの各点の被覆確率であって、前半のものとは条件が異なります。従って、点ごとの被覆確率がそれぞれ 90.69% と 90% 以下で異なろうと別に矛盾はなく、何らおかしくはないわけです。

期待値による解答

より詳細な解説を求めて web を彷徨っていたら、とある ブログ に期待値を用いた別解が載っていました。恐らく本質的には稲葉氏の解答と同じだと思います。

平面上に単位円板を密に敷き詰めると、覆われる面積の確率はpi / 2√3 ≒ 0.9069 である。よって、10個の点を配置したときに単位円板の敷き詰めにより覆われる点の個数の期待値は 0.9069 * 10 ≒ 9.069 である。期待値が9を超えるのは、10が存在することを示す。

注目している 10 個の点に対して、コインで覆われている点の個数(以下、被覆数 と書きます)の期待値が 9 より大きいということは、期待値の定義から、被覆数が 10 となる場合が存在していることを表しています。また、点の配置について特に制限はしていません。従って、10 個の点をどのように配置しても、その 10 個をコインで同時に覆うような(=被覆数が 10 となる)シートの置き方が存在する、ということを述べています。


しかしながら、期待値の計算やその値が本当に正しいのか疑問です。

まず、期待値の計算が (確率) × (点の個数) になっていることから、二項分布を考えているのだろうと思われます。つまり、注目している 10 個の点について、

  • 各点の被覆状態は互いに独立
  • それぞれの被覆確率は 90.69%

と考えていることになります。


被覆状態が独立ということは、各点の被覆状態は他の点の被覆状態に影響されないということです(この時点で、10 個の点がコインで同時に覆われるような場合があると言っているようなものです1)。

このような状況は、点同士が十分に離れていて、点ごとにシートを用意できるのであれば起こりますが、一般には起こり得ないと考えます。実際、点同士がそこまで離れていない場合、ある点の被覆状態を変えるようにシートを動かせば他の点の被覆状態も変わってしまう可能性があり、被覆状態が独立ではなくなってしまいます。従って、二項分布が適用できず、上記の期待値の計算が破綻します。


また、もし仮に被覆状態が独立で、各点の被覆確率が p だとしても前節と同様、この p は 10 個の点を見たうえでの各点の被覆確率なので p ≠ 90.69% かもしれません。従って、二項分布が適用できても期待値が 9.069 でない可能性があります。


以上のことから二項分布ではないとすれば、期待値が (確率) × (点の個数) で計算できる理由を改めて考える必要がありますが、今のところ不明です。

おわりに

長々と書きましたが、稲葉氏の証明や期待値を用いた証明は間違っていないと考えています2。ということは自分の考え方や理解に大きな勘違い、誤りがあるのは確かなんですが、それがどこかが分からず悶々とした日々を過ごしてます。

もし詳細に解説しているサイトや文献等あれば教えてくださると助かります。もちろんコメントで直接教えて頂けるのも大歓迎です!

それでは。

参考文献

  1. 10個の点(閲覧日:2024/05/10)
  2. 確率パズルの迷宮 - 父の本(閲覧日:2024/05/10)

  1. 循環論法?
  2. もし間違っていたらとっくの昔に誰かしら指摘しているはずなので…。